出来損ないの俺に、どうしてそんな風に優しい目をして、見つめてくるんだ。


両親からも向けられたことのない、慈愛に満ちた温かいその瞳は、俺の目のように汚れを知らない曇りなきまっさらな透明な色をしていた。


……いや、まあ目が透明な色なんてあり得ないんだけど。


実際には、彩夏の目は綺麗に透き通った薄茶色をしていた。


淡い桜色の唇は男の欲を煽るほどキスしたら気持ちいいだろうなぁ、なんていう気持ち悪い思考を連想させるもので、伏せられた睫毛が凄く長くて綺麗だなぁとか、


今にも消えてなくなってしまうんじゃないかってくらい透明なほどに色白なその肌に目を奪われて、大きな双眸が物凄く魅力的で、高い鼻も、すっと通った鼻筋も、無駄のない完璧なまでの輪郭も、───。


俺がその女に惚れる材料はあまりにも揃いすぎていた。



『……いや、俺んじゃねぇよ』



男がピンクのハンカチを持ってるって、どう考えてもカッコ悪いだろ。

惚れたばかりの女に、そう思われるのが嫌だった。