冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。



家を出てから、もう2時間以上が経過しているなんて……。


わたしの顔は真っ青を通り越して真っ白に染まっていた。

わたしがこんなにも狼狽えている理由。


──それは、伊吹くんからの電話にあった。


伊吹くんは、毎日必ず、夜に電話をかけてくる。

伊吹くんに3コール以内に電話に出てと言われたあの日から、わたしは忠実にそれを守ってすぐに電話に出られていた。


そんなわたしが、今日は何度電話をかけても出ない。

伊吹くんは心配を通り越して怒り心頭だろう。


……ほんと、どうしようっ。


わたしが恐るべき存在は、今や飛鳥馬様だけでなく伊吹くんだって例外とは言えないのに。


そんなことも忘れて、飛鳥馬様との約束に頭がいっぱいになって、スマホを家に置き忘れてくるなんて……。


わたしのばかっ、アホ……!!



「あ、あすま様……っ、もうここで降ろしてもらって、大丈夫なので…っ!」