冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。



鳩が豆鉄砲を食らったような驚いた飛鳥馬様の声と、敬語も語彙力も失ったわたしの慌てたようなか細い声。


顔中に血液がぶわぁっと昇り、飛鳥馬様のお耳に負けないくらい真っ赤っ赤になったそれを、見られてしまった。


こんなにも赤く染まった顔を見られてはいけない相手に、見せてしまった。


本当は、飛鳥馬様に抱きしめられたその瞬間から血液が逆流すように沸騰して、真っ赤に染め上げられていた自分の顔。



「…っ、それって、ちょっとはおれのこと意識してくれてるって受け取ってもいいの?」



上ずった声。いつもより幾分か高いそれは、飛鳥馬様らしくない余裕のない声。

だけどそこには、微かな期待も確かに見え隠れしていて……。



「は、い……っ」



そう答える以外に、他の答えなんて見つからなかった。


ああ、ああ……、ごめんなさいっ、伊吹くん。


こんなにも最低なわたしを、どうか許して。


あなたのいない所で、他の男の人の腕の中にいることに“幸せ”を感じてしまったわたしを、赦して。