冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。



む、無 反 応……。

心配になって、顔色を窺おうと試みるも。


さっき以上に顔を逸らされて、今度は体ごと背けられる。



「む、無視はよくないと思いますよ〜〜…?」



勇気を出して、言ってみる。
普段わたしの口からは決して出ないようなことを。


それでも



「………」



・・・

沈黙がさっきよりも長くなったような……?


仁科さんが運転するベンツの走行音だけが、車内に響き渡る。

体ごと背けられてしまったものの、飛鳥馬様の両耳は後ろからでも真っ赤っ赤に染まっているのがよく見える。



「……あすま──」

「…一旦黙ろうか」



ふいに、飛鳥馬様が振り向き、その漆黒の瞳に捕らわれたと思った瞬間。