ロイド様が私を心配して引き止めようとしたが、リアーナは止まらない。

しかし、テラスから離れた場所でリアーナが急に立ち止まる。

「お姉様、ありがとう御座います」

「え・・・?」


「私一人では、まだロイド様は誘いに乗って下さらない。だって、お姉様の婚約者ですもの」

「お姉様、私もう「無能」ではないのです。私、とっても「優しくて良い子」と言われるようになりましたわ。それにロイド様と同じく代表挨拶まで任されました」

「お姉様、知っていますか?王家の一部から私の評判が上がったことにより、ロイド様の婚約者を私に変えないかという声が上がっているそうです。・・・能力を一切持っていないお姉様より、私の方がロイド様にお似合いでしょう?」


リアーナはそれだけ述べると、私を置いてテラスに戻っていった。

リアーナは私がロイド様の婚約者である限り、私を憎んでいる。

しかし、リアーナは知らない。

ロイド様と結ばれるのは、リアーナであることを。

「皮肉なものね」

そう呟いた自分の声が、耳に残った。