その手を、ヴィーク様が急にぎゅっと掴む。

「ヴィーク様!?」

ヴィーク様は私が驚いていることにも動じず、数秒ほど手を握っていた。


「へー、ティアナ嬢はフィオール家を出たいんだね」


「っ!?」


私は驚きを隠せない。

「ああ、ごめんね。私の能力は、「触れた相手の言葉を遡《さかのぼ》って見る」ことが出来るんだ。わずか、30分ほどだけどね。能力を使って、ティアナ嬢の用件が分かるかは賭けだったけどね」

そういえば客間でアルレイド様を待つ間、私は呟いてしまっていた。

「婚約破棄された後にフィオール家を出たいなど、どうやって伝えれば良いの・・・」と。