意外な言葉が続けられて、何も言えずに口をつぐんでいた。
「確かに犯罪だけど、だからって十和くんまでもが悪人とは言えないと思うの。割り切れない事情があって……だけど法は、そこまで汲み取ってはくれないから」
俺は力なくかぶりを振る。
「俺は悪人だよ。愛だなんだって正当化して、何人も殺した。自由も人生も奪って壊した……救いようのない犯罪者」
つい自嘲気味に笑うと、芽依が眉を寄せた。
「だから、何なの?」
「……え」
「いまさら正しくなりたいとか望んでるの?」
「……俺にできることはそれしかないから。自首して罪を償うしか────」
ばっ、と手を振りほどかれる。
彼女は目に涙を溜めて怒っていた。
「正しくなんてなれるわけない。そんなの綺麗ごとだよ」
「……!」
「十和くんのやってきたことは消えない。許されない。自首して捕まって……そしたら真っ当になれるとでも思ってるの? そんなわけない」
透明な雫が彼女の頬を伝い落ちていく。
むき出しの感情が、言葉が、俺を貫いた。
「わたしを攫って、閉じ込めて、殺そうとして。日常を奪ってめちゃくちゃにしたくせに……いまさら遅いんだよ! こんなに好きにさせておいて、自分のためだけに出ていくの? 無責任なこと言わないで!」
火傷したみたいに、心の表面がひりひりと爛れて痛む。
(……それもそうだ)
俺には彼女を突き放す資格すらなかった。
もう、いまさら正しくなれない。
芽依の怒りがやっと理解できた。
正しさなんて関係ない。
ここにはそもそも、そんなもの存在しなかった。
だから、それを追い求めることすら高望みで、俺には最初からそんな権利もなくて。
「でも、じゃあ……俺はどうすればいいの……?」
「そばにいてよ。責任とって、わたしとずっと一緒にいて。……それしかないでしょ」
息をのんだ。
見張った瞳が揺らいでしまう。
「いい、の?」
「わたしは十和くんの罪を一緒に背負ってく覚悟もしてる。何があっても、このふたりの世界で一緒に生きていくつもり」
それは、どんな不自由も窮屈さも厭わずに一生ここに留まるということだ。



