カメラの死角部分へ誘導してから、きびすを返したふりをしてすぐに足を止める。
彼女が校門へ向かうのを見届けると、俺も昇降口を出て反対方向へ向かった。
道すがら、鞄の中からパーカーを取り出して羽織る。
職員駐車場へ出るタイミングでフードを被った。
ここは校舎内からの視認性は低いものの、カメラによる死角はほとんどない。
芽依が行方不明になったら、事件性を疑った警察が防犯カメラ映像を確認しにくる可能性がある。
俺が映っていても、俺だと分からないようにしなくちゃならない。
不審なフード男が颯真の車に乗る姿が映ってしまうけれど、それが颯真だとは思われないだろう。
校舎内にいる彼には目撃情報もアリバイもある。
俺は勝手に持ち出したスペアキーを使って、颯真の車を動かした。
(芽依ちゃんが薬飲んでから……もうすぐ15分)
きっと既に何らかの効果が現れ始めているはずだ。
近場に車を停め、急いで学校へと戻った。
俺の言う通り、芽依は律儀に木の下で待ってくれていた。
睡眠薬のお陰か、何やら屈み込んでいた彼女に手を差し伸べる。
「大丈夫?」
「大丈夫、ちょっと疲れてるみたい……」
「そっか、無理しないでね。待たせちゃってごめん」
「あ、ううん」
歩き出してもパーカーは脱がないでおいた。
彼女を車に乗せて運ぶとき、どうせまた着ることになる。
聞かれたらこれが“忘れもの”だと言えばいい。
そう思ったけれど、芽依が口を開く様子はない。
口数も少ないし、もう意識がぼんやりしてあまり頭が回っていないのだろう。
気づいてすらいないかも。
「そうだ。駅までの道、工事してるらしいからさ、遠回りしてこうよ」
車を停めておいた人通りの少ない道に誘導しつつ、彼女を顧みる。
「そういえば、前髪切った? 後ろもちょっとだけ短くなってるよね」
「……え、すごい。よく分かったね」
昨日、シューズロッカーから回収した封筒に入っていたからだ。
(……本当、颯真が見なくてよかった)
そう思うと同時に、何だかいまになって腹が立ってきた。
自身の前髪に触れた彼女の手を勢いよく掴む。
「爪も切ったんだ」
「な……」
その顔に驚愕だけでなく、怯えたような色がさした。
それを見て、ぞく、と身や心が痺れる。
「何で知ってるの……?」
「こないだ芽依ちゃんにノート借りたでしょ? そのとき見たより短くなってるもん」
正直なところ、どちらかと言えばそれは確信を得る材料の方だった。
この前、封筒に爪が入っていたから知っていただけ。
「芽依ちゃんのこと、ずーっと見てたから」



