その日の夜、誠一郎は
ベッドで腹痛を訴えた。

父親が家にある聴診器で
誠一郎のお腹の音を聞き
腹部を触った。

「これは急性虫垂炎だな…
いわゆる盲腸だ、
ずっと前から痛かったのなら、
癒着してるかもしれん
明日病院だ」

「え?なんですって!?盲腸…!?」

百合子は驚いた。

「お前はこんなに痛がってるのに
受験させたのか?」

「受験日は1日しかないのよ!」

「来年受ければいいことだ!」

父の章一郎は母を叱った。

誠一郎はベッドに寝かされ
その日は39度の熱が出た。

翌日病院に行き、誠一郎は
すぐに入院となり
その日のうちに
外科で手術となった。

盲腸を取り出したとき
盲腸は破裂したと
後に医師から、聞かされた。

誠一郎が我慢強かったせいか
盲腸は、あらゆるところに
癒着し、手術が手間取った。

さらに、通常1週間程度の入院が
10日になってしまった。

母親は、毎日
お見舞いに来て
りんごをむいてくれたが
誠一郎は、それを
食べる気には、
ならなかった。

なぜなら、まだ母親は
受験に失敗した誠一郎のことを
気に病んでいたのが
分かったからだ。