翌週、オーケストラに行き
桜田先生の指揮と一緒に
理緒はバイオリンをひいたが
20分も経たないうちに
「加納さん」と呼ばれ
「 あなたは別室で
練習していてください」
とオーケストラから外された。
40分後、桜田先生が別室に来たので
理緒は初めて桜田先生に抗議した
「 私は誰よりも
完璧にひいています!
誰よりも音を外していないし
誰よりもテクニックは…!」
と言うと
「私が望んでいるのは
そこではない」
と桜田先生が怒鳴った。
「なぜあなたはCDのコピーを
そのまま、ひくのです?」
「これが私なりの解釈です!」
「いいえ!あなたをコピーをしている
あなたの感覚を知りたいのです!」
理緒は黙った。
その感覚が理緒には分からない。
「先生がひいてみてください
私、間違ってるなら
先生の通りにひきます」
「いいえ!私の音を聞いてはダメです!
私の音をを、あなたは
真似するだけだ!」
理緒は混乱した。
「私の何がいけないんですか?
正しい音を出しています!
私のバイオリンは
どの第2バイオリンの方よりも
ずっと、整っていたはずです!」
「整っていますよ、 音だけは…
でもまるで機械のようだ
機械だったら CD を聞きますよ」
と桜田先生が怒鳴った。
「私の何がいけないのか分かりません!」
「そこが分からないのが
あなたの欠点なのです!」
2人は言い合いになった。
「来週もう一度、もう一度、
よく考えてオーケストラに
来てください
次はここから始めます」
桜田先生は、理緒に楽譜を渡した。
理緒は黙ってそれを受け取った。
帰宅して理緒は何時間も
練習したが、 やはり桜田先生の
言う言葉の意味は理解出来なかった。
私の音というのは何だろう?
私の解釈とは何だろう?
理解は一番好みのCD
を片っ端から聞いた。
翌週、桜田先生の指揮が始まり
10分もしないうちに
理緒はオーケストラを追い出された。
また、 別室で待機するように言われ
1時間後、桜田先生が
理緒のところへやってきた。
「何で私を追い出すんですか!?
先生は、私のことを
素晴らしいと言ってくれました
6年間も私を教えてくれました
私は誰よりも早く
上級 バイエル を終わらせ
誰よりも早く 曲を解釈
したつもりです!」
「あなたにバイオリンを
教えたのは間違いでした…」
桜田は悲しげな目をした。
「あなたはコピーをするだけだ
あなたは本当の意味で曲を
解釈することができていない
あなたに バイオリンを
教えるべきではなかった…
あなたは曲を理解していない
指揮者の考えも理解していない
作曲者の心も何もかも理解していない
桜の花びらが舞い散るように
川の流れが美しいように
小鳥がさえずるように
音楽は美しい…
あなたはその感覚を
何一つ 知らない
まるで機械のようだ
私があなたに
教えられることは
もうないでく
もう、ここで やめにしましょう
これが、あなたの限界です」
理解は呆然とした。
桜田先生は肩を落として
別室を去っていった。
理解はそこで泣き崩れた。
大学四年の春だったー

