母がいなくなり理緒は急に
不安を覚えた。

開業医の沢村と名乗る医者は
とても優しそうだった。

「 コーヒーだけじゃなく
ケーキも食べるかい?」

と聞かれたが

「… いいえ」

と、か細い声で理緒は断った。

そして、一息ついて
沢村は話し始めた。

「君のお母さんから
色々聞いたよ、
理緒ちゃんは一生懸命、
大学に行ってバイトもして、
バイオリンも習っているんだって?
素晴らしいことじゃないか。
私はそんな君を応援したいんだ」

「…応援…?」

「月20万でどうだろう?」

「…月20万?」

「そう、月に2、3回会って20万
大学の学費の足しにも
なると思うんだ

それに、お母さんも今、
大変な状態だろ?

少しでも力になりたいと思ってね

お母さんは、ある男性に
詐欺にあってね、もう、それは
可哀想で、見てられなかったよ…

なので今回のマンションの
敷金礼金も、引っ越し代も
私が出させてもらったんだ

もちろん理緒ちゃんの
将来のこともちゃんと
考えているからね

それで、お手当なんだけど
月に20万はどうかな?」

理緒は凍りついた。
自分は母親に売られたのだー

「私はそんなこと…!」

「でも、お母さんが
困ると思うんだ、
今日はね、ホテルに部屋を
取ってあるから
一緒に上がろう」

沢村はニコニコしながら
言ったが、理緒は恐怖で固まった。

「私…」

「大丈夫、心配しないで
怖いことは、何一つしないから
理緒ちゃんが、それでいいなら
月々の家賃も私が別途で払おう」

「家賃…」

家賃を払ってもらい
敷金礼金も払ってもらい
毎月20万も支払ってもらい
もうこれ以上、選択肢がない。

家を追い出されたら
大学まで行けなくなる。

理緒は断ることはできなかった。
と言うより、選択肢が
他になかった。

沢村は、 ロビーラウンジの
お会計を済ませ、すぐに
エレベーターで理緒を
部屋に招いた。

シティホテルの部屋は
美しく 広々としていた。

そして、沢村に

「シャワーを浴びておいで」

と促された。

理緒は泣きそうになりながら
覚悟を決めた。

理緒は泣きながら
シャワーを浴びた。

涙はシャワーで流されて行くが
これからされることを考えると
理緒は、おぞましく感じた。

シャワーから出ると
沢村は満足そうに理緒を
見回した。

「私もシャワーを浴びてくるよ」

と理緒に軽いキスをした。
そのキスも、理緒には
不快で、おぞましものだった。

それから理緒は沢村の
人形のように扱われ
ようやく、2時間が終わったー

最初は10万を手渡され
月の最後に残りの
10万を渡すと言われた。

「君のような可愛い女のコと
一緒に過ごせて幸せだよ
また、今度会おうね
次はもっと、リラックスして」

沢村はニヤリと笑った。

理緒はホテルの部屋を出て
マンションへ向かった。

下半身が痛い。

何より悔しくて
惨めだったー

こんな人に、
自分の初めてを
お金のために、
奪われるなんて
屈辱的だった。

それも全て母親が男に貢ぎ
だまされ、家を
追い出されたせいだ。

その母親は、
簡単に娘を男に売る。

理緒は涙を流しながら
木造アパートに帰った。