ワインとチーズとバレエと教授【番外編】

その日、帰宅したら
たまたま 母がいたので

「大学に合格できました
これが、授業料なのだけど」

と理緒は母に言うと
真理子は

「え!? 大学受験なんかしたの!?」

と驚いた。

母が驚くのは当然だ。
理緒は受験料も自分で払い
勝手に願書を提出し
勝手に大学に受験していたのだから。

「私は勉強が好きなの
法学を学びたいと思っています」

と語ると、母の真理子は
バンとテーブルに手を置いた。

「何なの!女に大学は
必要ないと言ったでしょ!?」

「でも私は最初から
進学コースに転入してました
大学を目指すのは当然です」

「誰がそのお金、出すのよ」

「ウチには父からの養育費が
支払われて、父が家を出るとき
300万を私のために
おいていってくれました
それでも年収が低いなら
奨学金の申請お願いします」

「イヤよ!あなたの
奨学金の保証人なんか
なりたくないわ!」

母は保険外交員をしている。
奨学金も連帯保証人ということを
知っている。
母はそれを拒んだ。

「じゃあ私はどうやって
大学に行けば…
せっかく合格したのに…」

理緒にとっては
高いレベルの大学だった。
母親もそれは知っている。

「だから女に学問なんて
いらないでしょ!?
担任教師は何て言ってるの!?」

「おめでとうと…」

「おめでとうですって!?
誰がその学費払うと思ってるのよ!
大学に行ったり、
バイオリンをやったり
フィギュアスケートをやったり
アンタ何様のつもり!?
自分が何でもできると思ってるの?」

真理子はまくし立てた。

「私はそれなりの努力を
してきましたが
何でもできるだなんて、
そのような、おこがましいことは
思ってもいません」

と淡々という理緒に対し
真理子は平手打ちを食らわせた。

「何を偉そうに!
今、自分が女盛りだからって
調子に乗ってるんじゃないわよ!」

と、再び平手打ちを食らわせた。

「何がバイオリンよ!
何がフィギュアスケートよ!
何が大学よ!」

真理子は金切り声を上げた。
理緒は、真理子の平手打ちなど
構わず

「担任の朝倉先生は
もちろん大学進学を
応援してくれて
サポートもしてくれました

フィギュアスケートの川村先生も
バイオリンの桜田先生も
全員私を応援してくれた
そして私はその期待のに応えた。
応援してくれなかったのは
お母さんと、お父さんだけです

だから私は自分で頑張った。
ここまで頑張れたのは
先生方のおかげです。

私は中学生のある日、
決心したの、

母さんや、お父さんの様には
ならないと決めたのー

だから大学へ行く」

それを聞いて、母親は
仕事用のスーツに着替えて
理緒の通う修堂高校へ出向いた。