放課後、君のとなりで

「お姉ちゃん!」 


すると、背後から突然知った声が響き、私は思わず肩を振るわせてしまった。


恐る恐る振り向くと、そこには血相を変えて息を切らせながらこちらに向かってくる凛ちゃんと華ちゃん。


「良かったー、追い付いて」


服装から判断するに、華ちゃんは私の姿を捉えるや否や、安堵の息を漏らして笑顔を向けてくる。


「ふ、二人ともどうしたの?お母さんは?」


まさか追いかけて来るとは夢にも思っていなかったので、私はしどろもどろになりながら二人の顔を交互に見た。


「なんか、お姉ちゃん泣きそうな顔してたから、ちょっと心配になっちゃって。お母さんにはちゃんと言ってきたから大丈夫だよー」


そう言って、凛ちゃんはやんわり微笑んだ後、私の目をじっと見つめてきた。


凝視されていることと、ずばり自分の心中を言い当てられたことに、私は冷や汗が流れ始める。



「……ねえ。お姉ちゃんって、もしかしてお兄ちゃんのこと好きなの?」


しかも、自分でも今さっき気付いたばっかりの感情までも言い当てられ、もはや何も言葉が出てこなかった。


「な、なんでそう思うの?」


動揺のあまり上手く誤魔化すことも出来ず、私は声を震わせながら何とか無理矢理笑顔を作って尋ねてみる。


「お姉ちゃんお兄ちゃんの近くに居た時、凄く辛そうだったよ。美菜お姉ちゃんよりもずっと。……だから、そうなのかな?って思って」


ここで瀬川さんの名前が出てきたことに思わず体が反応したが、何とか気付かれないように取り繕うも、私はこの大人顔負けの凛ちゃんの言葉にぐうの音も出なかった。


けど、ここで変に突っぱねてもしょうがない気がして、私は堪忍したようにため息を一つ吐く。


「やっぱり二人は凄いね。なんか、同い年の子と喋ってるみたい」


とりあえず、素直に認めるのが気恥ずかしくて、一先ず会話をはぐらかせてみる。


「うん。それ、お兄ちゃんにも良く言われるんだ。お兄ちゃん今まで彼女作ったことないから、私達が色々と女心とやらを教えてるんだよー」



本当に、この子達は小学生なのだろうか。


鼻を鳴らしながら得意げに言う華ちゃんの姿は年相応に見えるけど、会話の内容が合っていない。


そして、自分もそうだけど、相馬君もまだ彼女を作った事がないという言葉に安心してしまう私。


あの時教室で、女の子の扱いが妙に慣れているなと思っていたけど、もしかしたら可愛くもおませさんなこの双子の影響だったのかもしれない。


そう思うと、何だか微笑ましくなり、私は思わず笑みが溢れてしまった。