放課後、君のとなりで

「ねえ、朝倉さんも悠介に呼び掛けてみてくれるかしら?」


暫くして、こちらの方へと振り返った相馬君のお母さんは、口元を緩ませがらそう言うと、私の手を優しく引っ張った。


私は少し緊張気味になりながら、静かに彼の側に立つ。


まじまじと相馬君の顔を眺めた事はなかったけど、眼鏡がないせいなのか普段の雰囲気とはまるで違い、寝顔がとても綺麗に感じた。


それに、よく見ると睫毛も長いし、鼻筋も通っていて、顔もほっそりとしてるし、肌も荒れていなくて透き通るように綺麗。


存在感を示す黒縁眼鏡のせいで平凡な印象しか受けなかったけど、相馬君て実は美少年なんじゃないかと。


こんな状況下でなんて不謹慎な事を考えているんだろうと思いつつも、段々と胸が高鳴り始めていった。



私は小さく深呼吸をすると、恐る恐る彼の手にそっと触れてみる。



「……温かい」


その瞬間、思わず漏れ出した独り言。


当たり前だけど、こうしてしっかりと彼に触れられることが出来、今まで霊体の姿でしか接していない私は、つい感極まってしまう。




相馬君はまだ生きている。



確かに、彼の実態は今ここに存在する。



温もりもちゃんと感じるし、息遣いだってはっきりと分かる。





……それなのに。