放課後、君のとなりで

集中治療室内は静まり返っていて、一般病棟では見ない幾つもの精密機器と、それに繋がれた患者達のベットが複数並んでいた。


その誰もが、皆んな死んだように眠っていて、起きている人は一人もいない。




「……あ」


その中で見つけた相馬君の姿。



他の患者同様、ピクリとも動かない相馬君の体には数々の管が繋がれており、一向に目を覚ます気配が感じられない。


所々体には擦り傷や、傷が深かったのかガーゼや包帯が施されていたりと。


当時の事故の状況を物語るように、相馬君の容態は見てて痛々しかった。


「……お兄ちゃん、今日もダメか……」


先程まで明るい表情を浮かべていた双子は、相馬君の姿を目にするや否や、二人共影かかった表情で静かに眠る彼の顔を見つめる。


「全く、流石に寝過ぎでしょ!いい加減に目を覚ましてよ!お兄ちゃんが居ないと話し相手が減ってつまんないじゃん!」


すると、その内の一人が突然声を張り上げて、相馬君の体を軽くゆすり始めた。


「こら、凛!静かにしなさい。それに、動かしちゃダメだって先生も言ってたでしょ」


それを慌てて止めに入る相馬君のお母さんだが、その振る舞いには先程の活気があまり感じられず、何処か憂げな面持ちで相馬君に目を向ける。


そんな三人の姿を目にして、胸が締め付けられそうな想いに駆られた私は、唇を軽く噛んだ。




ここに相馬君は現れない。


こうして、訴える家族の声も、今の彼には何も届いていないんだ。



学校では普通に見たり聞いたり出来るというのに……。



本当なら、今すぐにでもその事実をこの人達にも教えてあげたい。


けど、話したところで信じてくれる筈もないし、余計な混乱を招きたくはない。


だから、私が、ちゃんと彼に伝えなくては。


もどかしい気持ちと沸き起こる使命感に、つい拳を握りしめる手に力が入る。