放課後、君のとなりで

「……あいつ、もう三日も意識がないんだってよ」


すると、中から生徒の会話が漏れてきて、その内容に引っ掛かりを覚えた私は、思わず扉に顔を近付けた。


「ああ。どうやら頭の打ち所が悪かったみたいだな。聞いた話だと、このまま目覚めなければ植物人間になるかもって。……あるいは……」


見ると、後ろのロッカーにもたれながら神妙な面持ちで話し込んでいる二名の男子生徒。


その向かいでは、相馬君が無表情で二人の様子をじっと眺めていた。



「おい、縁起でもないこと言うなよ!相馬なら大丈夫だって。外傷はそこまで酷くないって言ってたし、あと少しすれば直ぐに目を覚ますだろ」


短髪の男子生徒は、声を荒げて一喝した後、少し間を空けてから視線を足元へと落とす。


「それに、あいつの家だって相馬がいねえと大変なのは本人も重々分かってんだから。そう簡単にはくたばるかよ」


そして、若干声を震わせながら歯を食いしばっていた。


「……なあ、今度様子見に行かねえ?確か、この近くの大学病院だったよな」


それを見たもう一人の男子生徒は、短髪の男子生徒の肩にそっと手を乗せて宥めるように優しく語り掛ける。


「そうだな。それまでには、回復してればいいけど……」


短髪の男子生徒は何処か寂しげな顔でそうぼやくと、小さく溜息を吐いた。


その光景があまりにもどかしく、切なくて、私はこれ以上見ている事が耐えられなくなってきた。