放課後、君のとなりで

そうこうしている内にA組の入り口前まで辿り着き、私は恐る恐る教室の扉を開いた。


普段他クラスに顔を出す事なんて滅多にしない為、少し緊張気味になりながら、開けた隙間から中の様子を覗いてみる。


時刻はそろそろ部活開始時間を迎える頃で、残っている生徒は数人くらいしか居ない。


さっさと中に入ってしまえばいいのだろうけど、相馬君が周囲の人達に見えていない以上、このまま行けば他クラスの人間が一人で乗り込んできたと思われてしまう。


流石にそれを跳ね飛ばす勇気はない為、どうしたもんかと立ち往生していると、そんな私を余所に、相馬君は開いた隙間から体を滑らせて中へと入っていった。



「！？」


その光景に、私はハッと息を呑む。


今のは滑らせるというよりは、扉に体を貫通させたと言った方が正しいだろう。



空いた隙間は相馬君の体格に比べて遥かに狭く、普通ならとてもじゃないけど通り抜けることなんて不可能な筈なのに、相馬君はまるで扉に吸い込まれるように易々と奥へと進んで行ってしまった。


分かってはいたものの、他の人同様彼の姿はハッキリと見えるのでつい忘れてしまう。


けど、“実態がない”という事実をこうして改めて突きつけられた私は、暫くその場で立ち尽くしてしまう。