放課後、君のとなりで

「あっ……、ごめん。何でもないよ」


私の問い掛けではたと我に返った相馬君は、それに答えてくれる事はなく、いつもの穏やかな笑顔を向けて誤魔化してきた。


それが余計に私の心を締め付けてきて、思わず唇を噛む。




……なんで。


なんで、教えてくれないんだろう。



そんなに苦しそうな表情を見せておきながら、なんでまだ救いを求めようとしないの?



私は喉まで出かかった言葉を、ぐっと堪えて飲み込む。



そんな事を今の相馬君に聞いたところで、彼を困らせるだけだというのが目に見えて分かるから。


教えてくれないのは、きっと彼なりの理由があるのだろう。


昨日も言っていたように、事情を説明するのはストラップが見つかってからの話。


あくまでも彼はそれを貫くつもりであり、そうである限り、私はこれ以上踏み込む事は出来ない。



昨日までは、それでいいと納得していた。


……けど、先程の瀬川さんを見つめる相馬君の表情、何かを必死で伝えようとしている仕草を目の当たりにした今、それでは腑に落ちなくなってきている自分がいる。


柄にもなく、ストラップを探す以外で何か他にも出来る事があるのではないかと思えてくる。



……何故だろう。



私は、いつからこんなにお節介な人間になり始めたのだろうか……。