放課後、君のとなりで

それは、今までに見せた事がない苦しそうな表情。


時たま、真剣な面持ちを見せる事もあるけど、それとは違う、歯を食いしばって、まるで何かに堪えるようなような感じだ。


そんな相馬君を見ているのが辛くなり、私は瀬川さんの方に視線を戻す。



「そっか。分かった、ありがとう」


けど、瀬川さんにはこちらの状況何て知る由もなく、愛想笑いを振りまくと、再び歩を進めて相馬君の方へと近付いていく。


そして、彼女とすれ違う瞬間だった。



「美菜、君は……っ!」


相馬君は勢いよく後ろを振り返ると、悲痛の叫びの如く彼女の名を言い放つ。


でも、届くことのないその声は空を切り、虚しく散っていく。




それから、彼女は当然こちらの方を振り返ることもなく、そのまま通り過ぎて行ってしまった。


相馬君はそのまま呆然としながら瀬川さんの消えゆく後ろ姿を眺め続けていて、私はそんな彼に掛ける言葉が見つからなくて、暫く沈黙状態が続く。




「………やっぱり、ダメだ」


すると、先にその沈黙を破ったのは相馬君の消え入るような声で、私は黙ったまま彼の方に視線を向ける。


「アレがないと……僕は彼女を……」


独り言のように呟く相馬君の言葉。


“アレ”とはおそらくハピネスベアーの事を指しているのだと思うけど、その先の意味が良く分からない。



「……彼女がどうしたの?」


無粋だと思うけど、聞かずにはいられない心境に、私は相馬君の言葉を拾って尋ねた。