「由香里?さっきから何下ばっかり見てんの?」


午前の授業が終わり食堂へ向かう道中、通路の隅から隅を念入りに見渡している私に対し、夏帆はとても怪訝な目を向けてきた。


「えっ!?……ああ、うん。ちょっとね」


「ちょっとね……じゃないわよ。なんか、朝からずっときょろきょろしっぱなしだし、何か探し物でもしてんの?」


言われて自分の不審な行動にはたと気付いた私は、慌てて体裁を繕うも、時既に遅し。


思いっきり夏帆に感付かれてしまい、もう誤魔化す事は出来ないと観念した私は、気付かれないように小さく肩を落とす。



「うん……。ちょっとくまのストラップを……」


「はあ?くまのストラップ?」


そして、おずおずと正直に話した途端、最後まで聞かずに夏帆の間の抜けた声が被せ気味に飛んできた。


「あんた、そんな可愛い物に興味あったけ?むしろ、逆だよね?どうしたの?趣向でも変わった?」


これでもかと降りかかってくる質問の嵐。

私は段々と面倒くさくなり、うんざりするように大きな溜息を一つ吐いた。



「ああっ、もう!私のじゃないの!これはちょっと色々と事情があって……」


これ以上説明する気がない私は、適当に言葉を濁す。


というか、どうせ誰も信じてくれない話を説明したところでしょうがない。



「またそうやって誤魔化す!由香里は人にあんまり頼らないから。何かあったら相談乗るって言ってるでしょ?」


けど、夏帆は真剣な目でぐいぐいと迫ってきて、その直向きな想いに私はどう答えればいいのか戸惑い始める。