「……あのさ……」


その時、暫く沈黙を保ち続けていた相馬君からポツリと言葉が漏れ出す。


「…………何?」


自分から話しかけておいて、一向に喋ろうとしない彼に、私は痺れを切らしてその先を促す。


「もう一つ。僕がここまでこだわる理由なんだけどさ……」


そこまで言うと、再び黙り込んでしまい、何処か思い詰めるように相馬君は一点を見つめる。


急に神妙な顔付きになって言った話の続きが気になり、私は更に促そうと口を開いた時だった。



「彼女にどうしても伝えなくちゃいけない事があるんだ。……だから、その強い想いのせいで、事故に遭って意識が無くなった今でもこうして霊体として現れたんだと思う。僕がいまここにいるのも、全部その為なんだ」


とても意味深な相馬君の言葉に、軽い衝撃を受ける。


言っている事はよく分からないけど、何やら尋常じゃない相馬君の気迫に、私は思わず生唾を飲み込んだ。



保健室の時に見せたのと同じ、眼鏡の奥から光る力強い目。


普段穏やかな彼が時たま見せる、静かな情熱。


あの時もそうだったけど、まるで何かに追い詰められているような彼の様子は一体なんなんだろう。