「相馬君の彼女って……私だから」

自分のことを彼女だなんて今まで言った事がなかったので、どうしようもなく恥ずかしい気持ちに全身が熱くなり始める。

「………………は?」

案の定。
私の突然の告白に、夏帆は鳩が豆鉄砲を食ったような表情になり硬直する。

「えええっ!?な、何それ!?マジで言ってんの!?初耳もいいとこなんだけどおお!?」

それから数秒経ってようやく反応を示した夏帆の大声が廊下中に響き渡り、通行人達の視線が一気にこちらに集中した。

「う、うん。ごめんね、いつか言おうと思ってたんだけどタイミングがなかなか掴めなくて……」

本当なら直ぐにでも言いたかったけど、事情が事情なだけあって、今更のカミングアウトになってしまい申し訳なさを感じる。

「由香里が前言ってた好きな人って相馬君だったんだ!てか、いつの間に知り合ってたわけ!?接点何もなかったよね!?あといつから付き合ってたの!?」

しかし、そんな隙を与えないくらいの夏帆の質問責めに、予想はしていたものの、その勢いに押されてしまう。

「えと……実はちょっと前から良いなって思ってて……。少し話した事もあるよ。付き合ったのは一週間前で、先に告ったのは……私になるのか」

流石に本当のことは話せない為、私は嘘を交えながらこんな内容で果たして納得してくれるのか疑問を感じながらも、たじたじになりながら何とか説明する。

「なにそれー、超水臭い!教えてくれれば協力したのに!」

やはり良い顔はされず、かなり不服そうな顔で頬を膨らます夏帆。
そして、さらに尋問する勢いで口を開いた時だった。


「あっ、朝倉さんだ。丁度いいところに」

すると、廊下の端でやりとりしている私達の脇から突然瀬川さんが割り込んできて、不意をつかれた私は軽く肩が震え、夏帆も思いっきり目を見開いた。

「昨日悠介の家行ったら、凛ちゃんと華ちゃんが私と朝倉さんで女子会しようって言ってたよ。朝倉さんどうかな?」

そんな私達にはお構いなしと、瀬川さんはあっけらかんとした表情でそのまま会話を進めてくる。

「あ、うん。いいんじゃない?それ面白そうだね」

それから、私は瀬川さんのお誘いを嫌がることもなく、むしろ快く引き受けて彼女に満面の笑みを向けた。