「……え、えっと……それは……」

なんて言い逃れをすればいいのやら。
もはや何を言っても相馬君には私の気持ちが全部見透かされているようで、何も言葉が浮かんでこない。

まるで尋問を受けているような、窮地に立たされた状況に冷や汗が流れ始める。

しかも、こちらの言葉を待っている相馬君の真っ直ぐな目に捉えられ、全身の温度がみるみるうちに上昇し、心音がうるさいくらいに鳴り響いている。

…………もう、だめだ。


何とかギリギリまで悪足掻きを試みようとも思ったけど、これ以上相馬君に自分の醜い姿を見せたくなくて、私は全てを諦めて大きな溜息を吐いた。

「…………はい、好きです。大好きですよ。あの時は相馬君が瀬川さんの事しか見えていないのが辛くて泣いていました」

正に自暴自棄とはこの事。
全ての証拠を突きつけられた犯罪者はこんな気分なのだろうか。

人生初めての告白なのに、思い描いていたのとは全然違い、こんな投げやりな感じになってしまったのが何だか悲しく思えるけど、こうなってしまっては仕方ない。

内心は凄くドキドキしているのに、相馬君にしてやられたような状況がやっぱり悔しくて、不貞腐れ気味になりながら視線を逸らす。

そんな私の態度に、相馬君は突然吹き出すと、口元を押さえて小刻みに肩を震わせた。


「……朝倉さんって、本当に可愛い人だよね」

そして面白おかしそうに笑いながら言われた相馬君の言葉は、果たして褒め言葉なのだろうか。

可愛いと言われた事は嬉しいけど、何だか素直に喜べない私は複雑な心境だ。


……というか、人から好きだと言われているのに、動揺することなく、こんなに余裕でいられるなんて、やっぱり私は相馬君にとって恋愛対象じゃないんだ……。

まだ返事を貰ったわけではないのに、もうフラれたような気分に陥ってきた私は、目頭が段々と熱くなって視線を足下へと落とす。

「そんな君が僕も好きだよ」

すると、まさかの予想だにしない相馬君の言葉に、思わず勢い良く顔を上げてしまった。