ダブルミーニング/その2
麻衣


そろそろ晩夏って感じかな

まあ、いよいよって感じだけど、こっち的には

今、私の部屋には倉橋さんがいる

ここにきて、この人、大事な存在になった

私のやろうとしてること、以心伝心かもね

わかってくれる人、わかるんだ、私、基本的に変だけど

それに輪をかけて、”変なもん”やってるし

でも、倉橋さん、ヤバいよ、私にこれ以上は

意味いっぱいあるんだよ、時間が経つにつれ…


...


倉橋さんとは、剣崎さんの店で初めて会った

運転手とボディーガード兼で、私専属ってことで

無論、”監視”も役目だろうってことは、最初から承知だった

その日、店のカウンター座ってた倉橋さんの首に視線がいった

やけどのような跡があったんだ…

10センチ近くはあったかな?

倉橋さん帰った後、剣崎さんにその”傷”のことを聞いたんだ

剣崎さん、ふふって感じで少し笑ってから答えてくれた

「あれは、倉橋の勲章だよ」って

関西傘下と揉めた時、大阪万博の年だっていうからかなり前だ

向こう側に捕まって、リンチだって

で、首に焼き鏝やられたらしい


...



約5時間あまりの拷問、倉橋さんは屈しなかったんだって

やがて、リンチしてる一人が逃げ出したそうだ

倉橋さん、意識朦朧で、目がイッちゃってて…

無意識に他の連中、睨んだら、みんなそこから退散だって

向こうは親分が狂った相馬豹一だからって、怖くなったようだ

リンチしてる側が恐怖を感じたと…、

まあ推測らしいけど

人間っていうのは、そうなると逆転現象になるみたいだ

とにかく、剣崎さんとかが駆け付けた時、敵、誰もいなかったんだって…

なんか、笑っちゃ悪いけど、そんなもんだよね

私だって、ついこないだ、それに近い心理状況だったよ

それ、かいくぐってきたから…

相馬さんと命がけの睨めっこしてさ

ション便臭い小娘だけど、わかるんだ…

なんとなくだけど、かろうじてだけど

だから、倉橋さんのあの首、愛おしいんだな