「…あのですね、このみちゃん。ちょっとクマの顔……だいぶ恐ろしくね?」
「……頑張って描いたの」
「だっよねえ??初めて見たよ俺こんな愛嬌ありまくりの可愛すぎるクマ。キューティクル、このジンメン具合がまるでキューティクルじゃん。
“森のくまさん”ってより、もはやこちら“森の可愛すぎるくまさん”かな」
気づけばほら、私の心も色とりどりに鮮やかな色彩が付けられていた。
時間なんか忘れちゃうね。
もっともっと伸びればいいんだ。
「このみちゃん」
「…っ、」
伸びてきた手。
頬についていたらしい絵の具を拭ってくれるように、ふわっと撫でてきた。
「あ、ありがとう」
「どいたま。とくに絵の具なんか付いてませんけど~」
「……えっ?」
「ふはっ。騙されたりー」
残念なイケメンなんかじゃない。
しゃべらないほうがいいなんて、そんなことない。
今もどうして私は泣いてたんだろうって、結多くんのおかげで分からなくなってる。



