心優しい国王は王妃を堂々と愛したい

フレイアの裁判は、
誰の目に見ても明らかに不公平だった。
ヴォルヴァを筆頭に、
裁判に列席する貴族たちは
アスラウグ王国に強烈な嫌悪感を持っており、
フレイアを陥れようとする魂胆を隠そうともしない。
結論ありきでまるで形だけの裁判に、
オーディンは苛立ちを露わにしていた。

高等法院の裁判官は裁判長を含めて11人。
審議は多数決で決するので、
6人以上が有罪と判断すれば
フレイアの処刑が決まってしまう。
裁判長クヴァシルは『法の番人』とも呼ばれ、
権力やお金に流されることの無い公明正大な人物であると
オーディンも信頼しているが、
その他の裁判官ははっきり言って信用できない。
一体何人がヴォルヴァに買収されているのだろうか。

「アスラウグの酒のせいで一体何人の犠牲が出ていると思っているのだ!」
「離宮でこそこそと毒を作りおって、この魔女が!」
「アスラウグに報復を!まずはこの女の首を落とせ!」
貴族たちの怒りが次第にヒートアップしていき、
神聖な場であるはずの法廷が
阿鼻叫喚の地獄絵図と化してしてまっている。
罵声をその一身に受けるフレイアは
恐怖ですっかり縮み上がってしまっていた。

「静まれっっ!」
クヴァシルの一言が
喧騒の中にある法廷に響き渡る。
「原告たちの意見は分かった。だが、ここは神聖なる法廷の場だ。
如何なる理由があろうとも私語は厳禁である。
これ以上の罵詈雑言は法廷侮辱罪として追放処分に処す。」
法の番人の言葉に、
誰もが口をつぐみ、法廷は静寂に包まれた。