言い淀む密偵に、
ヘリヤ女王は続きを促す。
「フリッグは妊娠しているようで・・・」
1番聞きたくなかった言葉に
ヘリヤ女王は目眩を覚える。
浮気したことさえ許せないのに、
浮気相手を妊娠させたなんて
なんてことをしてくれたのか。

フリッグと内々に接触して堕胎させたいところだが、
この国で中絶は固く禁じられている。
女王とて神の教えに背くことは
決して許されない。
それはならばいっそ、
フリッグを国外への永久追放にしてしまおうか。
いや、それもできない。
フリッグは国内では有名人だ。
国外追放されたら国中の噂になるし、
国民を納得させるだけの理由が必要になる。
女王一家の不仲を国民に知られるわけにはいかない。

この件をなんとか穏便に収めるために
ヘリヤ女王は当事者を城へと召喚した。

ひっそりと登城したフリッグは
少しやつれてはいるが、
体調は問題なさそうだ。
理由を説明されずに呼び出されたジグムントは
フリッグの姿を見るなり
一瞬焦りの表情を浮かべたのを
ヘリヤ女王は見逃さなかった。
チラチラとフリッグに視線を送るジグムントとは対照的に
ジグムントに一瞥もくれないフリッグを見ると、
フリッグからジグムントに
特別な感情はなさそうだ。