オーディンは
側妃になるぐらいだったら
名門貴族に嫁ぐ方が
公務などの煩わしいことから解放されて、
ヴァールにとっても幸せではないかと思ったが、
ヴァールの意思が固いのを感じ、
その提案を受け入れた。

幼い頃から王妃教育を受けてきただけあって、
ヴァールはとても優秀だ。
王国への忠誠心は本物だし、
自分をよくサポートしてくれている。
もしかしたら王妃の良き理解者になってくれるかもしれない、
オーディンはそんな淡い期待を抱いてもいた。

「良いですかな、陛下。」
宰相ヴォルヴァがオーディンの控室にやって来た。
「あと30分後には式典が始まります。くれぐれも女狐の血を引く娘に情を移されませんよう。民の心が離れた王の末路を知らぬわけではありますまい。」
そう釘を刺すと娘のヴァールを連れて、
ヴォルヴァは式場へと姿を消した。