心優しい国王は王妃を堂々と愛したい

女王として戴冠してから数年が経つと
一国の舵取りにも慣れ、
堂々とした佇まいからは貫禄さえ伺えた。
幾度も訪れたピンチをなんとか凌いできた経験が
若き女王に自信をもたらしたようだ。

まだ王女だった頃、
影で自分を悪く言っていた貴公子たちも
今となっては自分に頭を垂れる存在だ。
復讐というわけではないが、
立場が完全に逆転していることに
胸のすく思いがした。

そんな何もかも上手く行っている時にこそ
事件は発生するものだ。
突如として夫ジグムントの浮気が発覚した。

それはヘリヤ女王にとって、
青天の霹靂だった。
ジグムントは政治に関与せず、
芸術分野のパトロンを務めて
才能あるアーティスト達を熱心にサポートするなど、
趣味の世界で生きている男だ。
何事に対してもガツガツしていないので、
女性関係で問題を起こすはずがないと
高を括っていた。

確かに、
ヘリヤ女王が即位してからは
夫婦として過ごす時間はめっきりなくなり、
夫婦とは名ばかりのものだった。
でもだからといって
女王である私に恥をかかすことをするなんて。
すっかり頭に血がのぼったヘリヤ女王は、
ものすごい剣幕で夫を問い詰めた。