心優しい国王は王妃を堂々と愛したい

「陛下、お話がございます。」
翌朝、
ヘリヤ王女は父である国王に謁見していた。

「どうしたんだ、急に畏まって。昨日1日部屋に閉じこもっていたと侍女から聞いたぞ。身体の具合でも悪いのか。」 
「もうすっかり元気ですわ。それよりお願いがありますの。私に縁談を進めていただきたいのです。」
突然の申し出に、
国王は目をパチクリとさせる。
「ヘリヤ、これは一体どういう風の吹き回しだ。自由に恋を楽しんでみたいと言ったのはそなたではないか。」
「社交界に出て、私は現実を知りました。いずれ私の臣下となる者たちと、恋愛は楽しめませんわ。それならば私に相応しい殿方と早く家庭を持って、煩わしいことから解放されたいのです。」
「それはなんと殊勝な心意気。お前のために、王妃とも相談して相応しい相手を見繕ってやろう。」
「どうぞ宜しくお願い致します。」

ヘリヤ王女は国王に一礼すると、
くるっと踵を返して自室に戻った。
この日以降、
あれだけ頻繁に顔を出していた社交界に
ヘリヤ王女が出席することはなかった。