「とにかく、何事もなく今日一日が終わってくれることを願うよ。」
礼装に着替えながら、
力なくオーディンは呟いた。

「こうなることは分かりきってたじゃない。自業自得よ。」
オーディンの着替えを手伝いながら、
ヴァールは事もなげに言い捨てた。
その言い切りの良さに
オーディンは思わず苦笑する。

ヴァールは宰相ヴォルヴァの娘で
オーディンとは幼なじみだ。
将来の王妃と期待され、
実際にアスラウグとの和平交渉までは
いつオーディンと正式に婚約するのかと
国民の間で噂されてきた。

が、アスラウグから王女がやってくることになり、
その立場は一変する。
貴族たちはアスラウグへの牽制の意味も込めて、
側妃となることを
ヴァールに要求したのだ。
王妃になることを信じて疑わなかったヴァールにとって
側妃という地位は屈辱だったが、
お人好しのオーディンがアスラウグの女に絆されないよう、
自分が監視しなければという使命感で
この要求を受け入れたのだった。