ヘリヤ女王の一団が帰国した後も、
フレイアの日常はさほど変わらなかった。
相変わらず生活の場はギムレー宮で、
忙しい合間を縫って訪れてくれるオーディンと
お茶をする日々。

目に見える変化は1つだけあって
侍女や警備兵のフレイアへの態度が
格段と柔らかくなった。
今までは必要最低限の関わりしかなかったが、
ちょっとした会話を交わすようになったし、
常時フレイアをサポートしてくれる侍女が1人できた。
名前をトゥーラと言い、
最近王宮勤めを始めたらしいが、
キビキビと働いてくれて随分助かっている。

トゥーラの話によれば、
巷ではアスラウグからの輸入品が大人気らしい。
晩餐会で好評だったアスフォデルスの蜜酒は
国民の間でも大人気だそうだ。
大虐殺以降に生まれた若者たちは
アスラウグへの感情も大人世代ほど頑なではなく、
音楽や演劇などのカルチャーも
積極的に受け入れていた。
「芸術面で遅れているビフレスト国民には、アスラウグのカルチャーは刺激的なんです。」
トゥーラは目を輝かせて熱弁する。

フレイアにはあまり詳しく知らないのだが、
昔から周辺諸国と積極的に交流していたアスラウグは、
芸術活動が非常に盛んである。
フレイアの母も王国一のプリマバレリーナとして
各国の劇場に招かれては
華やかなスポットライトと
万雷の拍手を一身に浴びていた。