「宰相閣下、今の状況を理解されていますか。
ヴァール様は衰弱されて非常に危険な状態です。
今手を打たなければ、命の灯火が消えてしまうでしょう。
ご自分の信念に固執なさるのも結構ですが、
そのせいで最愛の御息女を喪ってもよろしいのですか?」
エイルからの最もな指摘に
さすがのヴォルヴァも反論が出来なかった。

宰相が黙ったところで、
エイルはヴァールに話しかける。
「ヴァール様、ぜひこちらの薬を服用ください。
王妃様と一緒に私も調合に加わりましたので
品質は保証いたします。」
王家専属の薬師の言葉に
ヴァールもすっかり安心し、
エイルから薬を受け取ると一気に飲み干した。
「ご気分はいかがですか。」 
「まだ何とも変化はないけれど、
体がポカポカしてきたわ。」
「毎日服用してください。
数日で効果があらわれるはずです。」

エイルの予想通り、
ヴァールは数日の内にみるみる回復した。
症状が比較的重かったこともあり、
完全寛解というわけではないが
もう命に別状は無いだろうということで
オーディンもホッと胸を撫で下ろした。
この結果を受けて、
フレイアの無罪も確定したのだから
二重の喜びである。

オーディンは
この薬を広く国民たちにも行き渡らせるように指示し、
アスフォデルスの蜜酒の輸入を即刻禁止した。
ようやく希望の光が見えた気がした。