(まぁ、なんて豪華なお部屋なのかしら。)
初めて訪れたその部屋の豪華さに、
フレイアは息を呑む。
ここが王妃の部屋だと言われても
誰も疑いはしないだろう。
何から何まで一級品の家具で揃えられたその部屋で、
この部屋の主は苦しそうな呼吸を繰り返していた。

「あぁ、陛下。来てくださったのですね。
お出迎えもできす、
こんな見苦しい姿で申し訳ございません。」
美しく、溌剌とした輝きを放っていたヴァールは
すっかり痩せ細って顔色も悪かった。
「私のことは気にせずともよい。
そなたは病人なのだから、静かに横になっていなさい。」
オーディンが優しく諭す。
その姿を見て、
フレイアの心がチクッと痛んだ。

「おそれながら、
エイル様がいらっしゃるのは分かりますが、
なぜ王妃様までご一緒で?」
フレイアの顔を見るなり、ヴァールの顔が僅かに歪む。
「中毒症状を緩和してくれる薬を王妃が調合したんだ。
これを飲めば直に元気になれる。」
オーディンが差し出した小瓶を受け取った
ヴァールは明らかに戸惑っていた。

そしてちょうどその時、
ヴォルヴァが息を切らして部屋になだれ込んで来た。 
「ヴァールよ、そんな得体のしれない薬、
絶対に飲んではならんぞ。」
ヴォルヴァはヴァールから薬を奪い取ろうと
猛然と突き進んでくる。
そんなヴォルヴァを゙牽制したのはエイルだった。