故郷を追放され、死の森に一歩踏み入れば、背中がゾクゾクするほどの冷気が満ちていた。
真っ暗でざわざわと木々が揺れてどこから猛獣が飛び出すかわからない。
(とにかく、走る!)
サーシャは顔を袖で押さえて走り始めた。
隣人たちへの怒りを原動力に、ただひたすらに前へ走った。
もう戻れないから進むしかない。
(でも、このままじゃマジで死んじゃう!)
死の森で一番怖いのは猛獣ではない。
空気だ。
サーシャは口元を腕の袖で押さえて空気を吸い込む量を抑えようと努力したが、喉が焼けるように痛んだ。
口を押さえて、できるだけ前へ前へと走った。