サーシャが唇から流れ込む刺激を舌で感じていると、レオナルドの唇が離れていった。
(まさか、これって「味」?)
思わずもうちょっと欲しいと言いそうになった口を、サーシャは両手で押しとどめた。
レオナルドのキスには、今まで紙を食べて生きてきたサーシャにとって初めての「味」が宿っていた。
サーシャは特殊な能力を持っているためか、今まで主食は紙だったのだ。化け物らしい食事である。もちろん紙は全く味がしない。
「どう?俺の魔力って美味い?」
レオナルドがサーシャの鼻先で、あざとく小首を傾げる。妙に艶っぽいのだが、サーシャはそれどころではなかった。
「って、泣いた?」



