サーシャは彼が歩きながら置いていった言葉に首を傾げた。ホールから人が抜けて行き、最後までその場に膝を抱えて座っていたサーシャの元に王様姿のレオナルドがやってきた。


二人きりになったホールで、二人は静かに見つめあった。


最初はあんなに不気味だったくちばしフルフェイスマスクの王様が、今では立派に見える。サーシャはレオナルドを見上げて涙を拭き、薄紅色に可愛く笑った。


「王様、そのマスク、かっこいいですね」

「やっとわかった?」


二人でクスクス笑い合ったあと、レオナルドのぶ厚い手がサーシャの前に差し出された。


「俺の部屋においで、サーシャ。今夜は朝まで抱いてもいいだろ?」


レオナルドが美しい顔で極めて優しく誘ってくれる。


王様として立派に役目を果たす彼の中にはきっと、無力な自分への憤りや、バラバラになる国への寂しさ、抱えきれないほど重いものが吹き荒れているに違いなかった。


そんなレオナルドの側に朝までいたいサーシャは、微笑んでその手を握った。