「我ができるのは大地の浄化作業のみ。あとは見守るのが仕事じゃ。毒気や大蜘蛛を消すような干渉はしない。カルラ国が滅ぼうが人間が滅ぼうが我は静観する」


神である神獣の立ち位置として静観は正しい。人間が己の過ちで死ぬのは神が干渉すべきことではない。レオナルドは人間の過ちが全てを招いたことに頭が重かった。ぐうの音も出ない。


「浄化にはどれくらい時間がかかるんだ?」

「さあな。200年か、500年か、はたまた1000年か」

「死の森がカルラ国を食いつくす方が確実に早いな」

「じゃろうな」


大地を穢してしまった過去は何をどうしても拭えない。ますます滅亡への確信をもつだけとなり、レオナルドは俯いた。


カルラスープの最後の一滴を大きな舌で舐めきったカルランに、レオナルドの隣に座り直したサーシャが素朴な疑問をぶつけた。


「カルラン様のおっしゃることはよくわかったんですが、質問いいでしょうか」