サーシャがつるんとした石の床にぐったり倒れるレオナルドに駆け寄る。


レオナルドは顔の半面が血に塗れ、胴体の服は破れて胸にも無数の切り傷が刻まれていた。レオナルドが息を荒げて、涙顔で見下ろすサーシャにか細い声を出した。


「サーシャ、逃げろ」

「嫌です」


サーシャはレオナルドが負けたことを悟って、レオナルドの血がついた頬を優しく撫でた。ここが死地というのかもしれない。


死を覚悟したレオナルドがふっと笑う。「最後まで一緒」はこうも心強いかと、こんな窮地でも嬉しくなってしまった。


「まあまあの使い手じゃ。遊び相手くらいにはなったの」


ふわっと着地する音も立てずに現れた人物を、サーシャは振り返った。レオナルドを切り刻んだ相手の姿を見て、サーシャは薄紅色の目をくるんと丸くする。