大蜘蛛相手ならば一般団員であっても相手が可能だったが、巨大蜘蛛の出現は想定に無かった。巨大蜘蛛一匹に手間取っているうちにあっという間にやられてしまう。
これほど戦力に差があるとなると、レオナルドがいなければ即壊滅だ。
団長はルテの細い肩を頼ってまっすぐに立ち、レオナルドに方針を打ち立てる。騎士団の指揮は団長の仕事だ。
「レオとサーシャがいれば、俺たちは王都まで撤退が可能だ。だが、お前に守られて生きて帰ったところで俺たちには絶望しかないのも……それはここにいるみんなが承知だ」
このまま命からがら生きて帰ったとしても、盾魔法が消滅した国の滅亡は防げない。もはや生きた領土は王城のみとなり、閉じ込められた国民たちはじわじわと飢えと毒気に殺されるだけだ。
国を守る騎士団として、団長は決断を下す。
「俺は、撤退を選ばない。俺が選ぶのは元凶の洞窟の奥にいる何かの討伐だ」
レオナルドは団長の決意を聞いて、無意識にサーシャの手を握った。サーシャは縋るように握られたその大きな手を優しく握り返す。
「レオ、一人で行ってこい。お前なら、何が相手でも勝てる」
「俺でもそう命令する」