銃声の鳴った東側をレオナルドが鎮圧して陣の中心に戻ると、陣はすでに撤退したもぬけの殻だった。レオナルドが東へ回った間に西から陣の中心に巨大蜘蛛の襲撃があったようだ。


ふわふわ上空からレオナルドが焚火が残ったままの陣を見て回るが、団員は一人もいない。死体が一つも残っていないのが幾分か息をつかせてくれる。


「やられたな」

「……団長たちなら、大丈夫ですよね」

「当たり前だろ」


サーシャはレオナルドのローブの端を握って深刻な状況を目に映しながらも、落ち着いて団長たちの退却の無事を信じた。


「退却予定地は切り立った壁の方にある洞窟でしたよね」

「よし、行くぞ」


もしもの退却予定地は団員に周知されていた。


レオナルド不在で巨大蜘蛛が到来した場合、一対一に持ち込める環境として切り立った山壁にある小さな洞窟を目指す。巨大蜘蛛の報告を受けた時点で、団長が対策を練っていたのだ。危機管理の賜物である。


サーシャはレオナルドの背中にくっついて、上空から団員たちの避難場所を探す。


「あ!レオさん、あそこ!鉄砲の煙!」