サーシャの口があんぐり開いた。


「いりますよ?!レオさんが惚れたって言ったら自動的にお付き合い始まると思ってます?!」

「違うのか?」

「違いますよ!」


レオナルドは台風を起こせそうなほど質量のある銀色の睫毛をぱちくりさせた。まさかの図星のようだ。俺様もここまで行くとすごい。


「まさかレオさん、あの日からずっとわ、私のこと恋人だと思ってたんですか?」

「思ってた。お前、俺の恋人じゃなかったわけ?」

「ちっがいますよ!!」

「え、マジで?」


サーシャが全力で否定して、レオナルドはついに勘違いに気づき、耳の先っぽをスッと赤くした。レオナルドは今までずっと恋人としてサーシャを可愛がってきたつもりだったというのに、それはサーシャに全く伝わっていなかった。


一人お付き合い絶好調だったレオナルドは恥を知る。


「はーマジか、なんだそれ、俺カッコ悪……」


さすがに情けないったらない。レオナルドはでかくてぶ厚い手で火照る美顔を覆って、長い足を折りたたんでしゃがみこんだ。


サーシャも体中がカッカし続けていた。惚れたと言われた日から何回キスを重ねたと思っているのだろうか。


(つまり、あれもこれもそれもレオさんのキスは全部、お食事にかこつけた、ただの恋人キスだった?!)