背中から聞こえる王様のびっくりするくらい大きな声にサーシャは飛び上がった。驚いていると目の前にくちばしフルフェイスマスク装着の王様が現れた。お食事は終わったようだ。


「本気で嫌だった?!」


至近距離のフルフェイスマスクはド迫力だったが、それより大きな両手がサーシャの肩をつかんでぐわんぐわん揺らしてくるのでサーシャはされるがままだった。どうして王様がそんなに取り乱すのか。


「お、落ち着いて王様」

「レオナルドのこと嫌い?!」

「い、いやそうではなくて」

「じゃあ何?!」


丸い虚無黒目がサーシャにぐんぐん近づいてくるのでサーシャは顔を背けるのに必死だ。こんな虚無顔のくせに意外に情緒豊かな王様である。


サーシャは誤解が生じたことを感じてぶつぶつと恥ずかしい説明をすることになった。


「あんなに毎日熱烈にキスされると、その……今よりもっと好きになっちゃいそうで、嫌です。すごく嫌」


フラれて失恋してしまった以上、これ以上好きになっても苦しいだけだ。サーシャはその想いを言葉にしたつもりだった。


(ああ、今も好きだけどもっと好きになったら困るって話な。何が困るか知らないけど、サーシャは初心いからその先が怖いのかも?まあ、だからゆっくりやってんだけど)