サーシャの許可なく、王様はサーシャの小さい手を大きな手で握って歩き出す。


「サーシャが俺の仕事につき合えばいいだろ。その途中で話せ」


王様の名に恥じない俺様っぷりを発揮して、王様はサーシャを引っ張っていく。


王様は王城を迷いなくくるくると歩いて、王城の壁に刻まれた文様をぶ厚い手でなぞって歩く。セレナが教えてくれた、盾魔法を流し込むための文様だ。


「ルテさんも撫でてましたけど、王様もこの文様を撫でるんですね」

「点検だ。この文様は非常時に王城を守るからな」


王城の壁の隅々に刻まれたこの文様は、もしも団長が死んだ際に国を毒気から守る最後の砦だ。王様は点検も大事な仕事である。


そうやって文様をなぞりながら王城をくるくる歩き回った王様は、階段を上り切って上塔の一番高いところにやってきた。


「ふわーすごい眺め……」