「王様、特別任務が成功すれば、戦争しなくていいですよね?」


サーシャはレオナルドによく似た王様のぶ厚い手を両手でぎゅっと握った。


「私、任務が成功するように訓練がんばります。だから、王様。レオさんに怖い命令なんてしなくていいです!」


サーシャは王様を見上げて、また薄紅色の花のように可憐に笑う。


「心配しなくていいですよ!」


王様の大きな両手の拳を小さい手でぎゅっと握り、ふんと鼻息で気合を入れたサーシャは手を離してまた走って行く。


「王様、おやすみなさーい!」


途中で振り返り、左胸をコンコンと拳を叩いてから、サーシャは騎士団宿舎へと走って行く。王様姿のレオナルドは立ち尽くして彼女を見送った。


大らかで朗らかで優しいサーシャに長年の悩みを救われて、レオナルドの胸が痛いくらい鳴った。


(どれだけ俺の胸を鳴らせば気が済むんだ……これ以上惚れられないくらいなのに、まだ好きにさせる)


恋人との星空散歩デートが最高に愛らしく、天井知らずで恋心を育てていく王様レオナルドであった。