「わかりました。いつまでですか?」

「今日中に決まってるだろ」
「……」


腕時計をチラリと見る。現在、午後一時。積み上げられらた資料の高さに目を見張る。


「出来るよな?」
「……わかりました、間に合わせます」


だけど、いくら資料が富士山みたく高く積みあがっていようが、打ち上げられたロケットよりも高かろうが、「それがどうした」と一蹴するのが目の前の人――私の上司だ。

妥協を許さない、矢吹 柊(やぶき しゅう)。アルファだ。加えて、いつも私に一切の容赦がない事でも有名だ。

吊り上がった目に、だらしなく伸びた髪がかかっている。髪の色も黒色だから、釣り目に加えて暗黒オーラが付随し、怖さが倍増だ。

口調も乱暴で、部下へ仕事を回す量なんて乱暴どころか横暴だ。こうやって期限ギリギリに仕事を頼みに来ては「出来るよな?」の圧をかけてくる。

出来ないよ。
やるけどさ。

仕方なく、ため息をつきながら資料に目を配る。これは……文章だけでなく図やグラフも必要になるまとめ方をしないと、矢吹さんが納得しないパターンの資料だ。


「今から、あの資料を……?」
「うわぁ、矢吹さん鬼すぎんだろ」
「また比崎さんだねぇ、可哀想に」