エレベーターがロビーに到着するたびに、あたしはすぐに視線を向ける。 違う。 次郎じゃなかった。 こぼしそうになる溜息を、何度も呑み込む。 そして……――。 次郎がロビーに現れたのは、あと一時間で朝食が終了するという頃だった。 「おはようございます」 あたしは、一人のホテルマンとして、お客様でもある次郎に挨拶をする。