軽く説教をしながら、市来くんはあたしの頭をポンポンと叩く。 「うん……うん、分かってるよ」 じゅうぶん分かっている。 彼女のいる男。 ホテルのお客様。 そのどちらにも、関わってはいけないことくらい。 でも、好きになってしまったんだ。 次郎がどんな人なのか、よくは知らない。 だけど、あたしは、心の底から次郎を好きだと思ったんだ。