彼女が戻ってくることを知らせる携帯は、まだ鳴らない。 ――どうか、鳴らないで。 そう願う、次郎を好きだと思うあたしと。 ――お願い、早く鳴って。 ひたすら願い続ける、ホテルマンのあたし。 どっちが本物のあたしなんだろう……。 「なぁ、美月。あいつが戻ってきても、俺が無理だって言っただろ?」 ほろ酔い加減になってきた次郎の口調が少しずつ変わる。