あたしはソッコーで、フロントカウンターに向かい、市来くんを呼び出した。 「……おまえ、信じらんねぇ」 呼び出された市来くんは、眉間に皺を寄せて、開口一番にそう言った。 「お願い、見逃して!!」 半泣きになりながら、あたしは拝むように両手を合わせ懇願する。 「………」 市来くんは口をへの字に曲げて、あたしをじっと見据えた。